第5回 海岸や港で気軽に海鳥観察

第5回 海岸や港で気軽に海鳥観察

第5回 海岸や港で気軽に海鳥観察


 野鳥画家 神戸宇孝さんの新連載の第5回

 

はじめに


 バンガードのサイトを閲覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ちました。 長年、鳥に会うためにどのようにすれば良いか?を考えて生きてきたせいか、鳥の探し方や見分け方について質問をよく受けます。 慣れてしまえば実際には難しくはないのですが(ズボラな私でもできる!)、それがビギナーの皆さんにとって役立つ情報とのことで、2年間で8回の連載を通して、 環境別にバードウォッチングが上達する方法を紹介していきたいと思います。

 

よろしくお願いいたします。

 

カモメの見分けに挑戦しよう


 これまでの連載で解説してきた双眼鏡で野鳥を捉えるコツが自分の技術になったら、次は自分で鳥を見分けることにぜひ挑戦していただきたいと思います。「観察している鳥と似ている鳥の違い」に気づくようになるのが重要です。そのコツを掴むには、カモメの仲間の観察が向いています。カモメの観察には港が最適ですが、漁師さんにとっての仕事場です。くれぐれも作業の邪魔にならないようにしましょう。水揚げ時間を避けることや、衛生上の理由から関係者以外の立ち入りを禁止している場所には絶対に入らないなど、最低限のルールを守りましょう。

 

港の代表的な風景

 

カモメの「大人の鳥」を見分けよう


 カモメの仲間の見分けは、白く見える大人の鳥(成鳥)で練習をしましょう。もちろん港には幼鳥もいるのですが、茶色の模様が非常に似ていることで見分けが難しい種もいて、実はベテランと言われる方々でも見分けで断定を避ける人もいるほどです(そういう私も長年野鳥観察をしていて、なかなか見分けが上達できない一人です)。防波堤などにずらりと並んでいる場所が見つけられれば、観察と比較を同時にできるので最適です。

 

カモメがずらりと並んだ防波堤。複数の種が同じ場所にいるので、比較がしやすい

 

まずはウミネコをベースに3種の見分けに挑戦しよう


 カモメの仲間で最初に覚えたいのは、ウミネコです。日本全国に一年中生息しているので、海辺へ行けば出会う機会の多いカモメの一種です。

 

ウミネコ

 

 ウミネコの特徴は、背中と翼の先端の色が濃く、脚の色が黄色、嘴の先端が黒と赤のまだら模様であることです。他のカモメと見分けるときには、これらの点が重要です。また、飛翔をしたときに、尾羽に黒い帯の模様が出ることも覚えておきましょう。沖合を飛ぶカモメ類で観察している個体が成鳥と確認できた場合は、この黒い帯があればウミネコと判断することができます。

 

飛翔するウミネコの尾羽には黒い帯の模様

 

 次に覚えたいのは、セグロカモメです。見分けのポイントはピンク色の脚、背中の色が翼の先端の黒と違い、灰色です。嘴の先端部分は赤い点だけで、黒い模様はありません。

 

セグロカモメ。ウミネコとの色差に加え、セグロカモメのほうが大きいという違いもある

 

 3つ目に覚えたいカモメは、オオセグロカモメです。セグロカモメの背中の灰色をウミネコのように濃くしたような雰囲気が特徴です。脚の色も同じなので距離が遠い場合にはセグロカモメと見間違えてしまうかもしれませんが、翼の先端の黒色と背中の色を濃さの違いをしっかり見ることで、その間違いを避けることができます。

 

オオセグロカモメ。ちょっと顔つきが怖いので日本ではあまり人気がないのですが、世界的には極東地域にしかいない分布域の狭い鳥

 

カモメの見分けは難易度上昇中!?


 先ほど、カモメの識別は成鳥で練習しましょうとお伝えしました。しかし、最近は成鳥でもベテランは敬遠する人が増えつつあります。その理由は、最近は日本にやってくる「セグロカモメ」が1種ではなく、脚の色がやや黄色っぽいことや後頭部にある斑点の量などで別種とする見解が出たりしています。最近はまたそれが変更されたりして、実にややこしい状況なのです。ここではその細かな分類はひとまず置いておいて、すべて「セグロカモメ」としています。

 

一番簡単!?ユリカモメ


 ややこしい「セグロカモメ」は置いておいて、最後に一番簡単に見分けられるユリカモメをご紹介します。全体的に白っぽいカモメで、嘴と脚が赤いのが特徴です。今回ご紹介するカモメの中で一番小形の種で、比較的内陸部まで飛来することが多いのも、他のカモメとの違いの一つです。

 

ユリカモメ(冬羽)。夏になると頭部が黒くなる。写真の個体の脚についているのは、移動の研究用に装着された足環

 

カモメ以外の鳥たち


 カモメ以外にも海岸には様々な鳥がいます。まず見つけてほしいのは、クロサギです。日本の首の長いサギの仲間はほとんどが白いのですが、このサギはその名の通り黒っぽい色をしています。また他のサギ類は田んぼや川などの淡水域に生息しているのにこのクロサギはゴツゴツした岩のある海岸を好んで生息しています。海岸に来ないと会えないクロサギをぜひ探してみてください。

 

海岸に生息するクロサギ。群れを作ることもなく、ひっそりと暮らしている

 

 海岸の鳥としてウミウもその代表的な鳥です。カワウに非常によく似ているのですが、カワウが比較的静かな水面のある場所を好むのに対し、ウミウは荒波が打ち付けるような環境で見かけることが多い鳥です。顔の模様や体形がカワウに比べてがっしりしているのも特徴です。この鳥もオオセグロカモメのように極東地域にしか生息していない鳥ですので、しっかり観察したい種の一つです。

 

ウミウの群れ。カワウよりも警戒心が強い。長良川の鵜飼いに使用されているのは本種

 

 海岸や港で見られる鳥として、イソヒヨドリもぜひ観察しておきたい種です。雌雄で色彩に大きな違いがあり、雄は頭部が青く、腹部が赤いのが特徴です。メスは全身が褐色で腹部の鱗模様がとても綺麗です。

 

 

イソヒヨドリの雄

 

イソヒヨドリの雌

海岸の林の中は春と秋に要注意!


 海の近くに住む人々は、昔から海岸から飛散してくる砂から集落や家を守るために、海岸に沿ってマツなどを植えてきました。その緑地を鳥たちも春や秋の渡りの時期に利用しています。春は3月から5月、秋は9月から11月頃までの期間、さまざまな鳥達が渡りの途中に利用しています。林の中を散策できるように公園になっていたり、小道が整備されているところがあるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。

 

散策路のある海岸林の例。春は早朝に歩くと様々な鳥の声で溢れることもある

 

春に群れで見られることが多いコムクドリ

 

枝先で動き回るセンダイムシクイ。春はさえずりでその存在に気がつくことが多い

 

時には上空に注意して


 海岸や漁港では猛禽類も現れます。一番多いのはトビですが、断崖のあるような環境ではハヤブサがいることは珍しくありません。

 

海岸の断崖の例。このような環境があれば、ハヤブサがいるかもしれない

ハヤブサ。翼の先端が尖っているのが特徴

 

いろんな鳥が見られる海岸や港へぜひお出かけください。重ねてのお願いで恐縮ですが、漁港は漁師さんや海に関わる業務をされる方々の仕事場ですので、彼らに「またおいで」と言ってもらえるようなバードウォッチングを心がけてください。よろしくお願いします。

 

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筆者紹介


神戸宇孝

野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール: 1973年石川県生まれ。
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる。CWニコル氏の環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて選ばれる。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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