第4回 里山でバードウォッチング!

第4回 里山でバードウォッチング!

第4回 里山でバードウォッチング!


 野鳥画家 神戸宇孝さんの新連載の第4回

 

はじめに


 バンガードのサイトを閲覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ちました。 長年、鳥に会うためにどのようにすれば良いか?を考えて生きてきたせいか、鳥の探し方や見分け方について質問をよく受けます。 慣れてしまえば実際には難しくはないのですが(ズボラな私でもできる!)、それがビギナーの皆さんにとって役立つ情報とのことで、2年間で8回の連載を通して、 環境別にバードウォッチングが上達する方法を紹介していきたいと思います。

 

よろしくお願いいたします。

 

秋から翌春がベスト


 これまでの連載で解説してきた双眼鏡で野鳥を捉えるコツが、自分の技術になったかどうかを試すのに、里山は非常に良い環境です。特に越冬している秋から翌春までの期間は、北国から様々な鳥が渡ってくることで種類も個体数も増える時期です。ぜひ里山でのバードウォッチングにトライしてみてください。まずは「谷戸」という環境を探してみましょう。バードウォッチングに特に適した谷戸は

 

  1. 谷の中に田んぼや畑など、開けた場所がある
  2. 上空が見やすい場所がある

 

この2点がある場所に注目してお散歩しながら野鳥を探していきましょう。

 

谷戸がある代表的な里山の風景。近年は自然公園として整備されていることも多い

 

鳥の姿全体が見える場所に止まる鳥を探そう


 谷戸環境は、様々な生き物が生息している場所で、昆虫などを食物としている鳥たちを観察するのに非常に適しています。 そのような鳥たちが好む場所は、木の枝先や杭、フェンスなど周辺を見渡せる場所です。そんな場所によくいるのが、モズとジョウビタキです。まずモズを紹介します。

 

モズ(雌)

モズ(雄)。雄は嘴の根元から目を通る黒い太い線が特徴です

 

 モズの大きさは、スズメより少し大きいくらいで、嘴の先がタカのように曲がっているのが特徴です。また止まっているときに尾羽をゆっくり回すように振っている行動で、模様が見えなくても識別ができます。秋から冬には1羽ずつで縄張りをつくりますが、春先になると、雌雄2羽で行動する様子が見られるようになります。

 雄は嘴の根元から目を通る黒い太い線が特徴です。

 

次に、ジョウビタキです。

 

ジョウビタキ(雄)

ジョウビタキ(雌)

 

 モズと並んで観察しやすい鳥で、雌雄で色が大きく異なります。雄はお腹のオレンジ色が特徴で人気ですが、雌の腹部が褐色で地味な姿もファンが増えています。「大きな目の位置がはっきりわかって可愛い」というのが理由だそうです。

 ジョウビタキも尾羽を振る行動を見せますが、一度お辞儀をするように頭を下げるというモズとの違いがあります。以前は日本に冬にだけやってくる鳥で、里山や緑の多い公園や市街地で見られていましたが、近年は本州の高原や別荘地での繁殖が見られるようになった、話題の鳥の一つです。

 

ホオジロの仲間の識別に挑戦しよう


 里山環境で一年中観察できる鳥の一つに、ホオジロがいます。スズメくらいの大きさで、色彩もスズメに似た印象を受けますが、よく見ると顔の模様や色合いがスズメとは異なります。

 

ホオジロの雄。雌は全体的に褐色になる

スズメの群れ。顔の模様や全体的な色の違いを確認しよう

 

 ホオジロをきちんと識別できると、秋から冬にかけて里山に飛来するホオジロの仲間(アオジとカシラダカ)も見わけられるようになります。

 

アオジの雄。頭がモスグリーンでお腹はやや黄色っぽい

アオジの雌。全体的に黄色っぽい

カシラダカ。ホオジロよりも頭の羽毛が少し長いので「頭高」

 

 西日本では、この2種に加えて覚えておきたいのが、顔の黒と黄色がとても綺麗なミヤマホオジロです。私が九州へ行った時には、街の中の緑の多い公園でも見かけました。東日本ではやや珍しい鳥で、私にとっては憧れの鳥の一つです。

 

ミヤマホオジロの雄。カシラダカのように頭の羽毛が少し長く、シルエットは似ています

 

ツグミの仲間を探そう


 里山には、周辺の木々に比べると太い木などがある神社が存在することがあります。境内には木々が鬱蒼として、少し薄暗い環境を好む鳥が生息しています。地域の方々にとって神聖な場所でもあるので、節度あるバードウォッチングを楽しみましょう。

 

神社の入り口。スギやヒノキ、欅、楠の大木などが、御神木になっていることがある

 

 神社の境内には、よくツグミの仲間が見られます。まずは基本となるツグミを紹介します。背中が赤茶色で頭部と胸、腹が白黒の模様をしています。地面を歩きながら落ち葉を嘴ではねのけて、虫や木の実を食べています。

 

ツグミ。胸や腹の模様には個体差があるので、多少の色違いを別の種と間違えないようにしましょう

 

ツグミの仲間、シロハラ


 

 ツグミの次に覚えたいのが、シロハラです。いる場所、大きさ、行動がツグミと似ているのですが、雄は目の上に白線はなく、目の周りに黄色いリングがあります。ツグミと同じく冬鳥として日本に飛来し、春になると北国へ帰っていきます。日本にやってきて間もない秋は警戒心が強いことが多いのですが、桜の蕾が膨らみ始める春先になると人をあまり恐れなくなり、人がそばにいても平気で地面を歩く姿を見ることも多くなります。

 

シロハラの雄。シロハラもツグミ同様に落ち葉をはねのける行動をしますが、ツグミよりも落ち葉のはね除け方がパワフルで、ガサガサという音が大きいように感じます

 

ツグミとシロハラがいたら…


 ツグミとシロハラがいたら、もう2種ほど探して欲しい鳥がいます。シロハラとルリビタキです。この2種はツグミやシロハラほど数は多くないのですが、周囲の雑木林に比べて少し暗い境内の林が特にお気に入りのようです。お腹がオレンジ色の「アカハラ」はツグミとほぼ同じ大きさで、雄は綺麗な瑠璃色の「ルリビタキ」はスズメほど。ぜひ探してみてください。

 

アカハラ

ルリビタキ(雄)。雌は色合いがジョウビタキ雌に似ていますが、脇腹が少し黄色っぽく、尾羽が青色をしています

 

ゆっくり空を眺めてみよう


 里山では空にも注意しましょう。以下の画像のような見晴らしの良い場所で、休憩を兼ねて少し空を眺める時間を確保すると、越冬にやってきた猛禽類に出会うことがよくあります。

 

ベンチがあれば最高ですが、ちょっと敷物があると便利です

 

猛禽類の出現を教えてくれるカラス


 タカやフクロウといった猛禽類は、獲物に存在が知られないように、なるべく目立たないようにしていますので、見つけるのが難しい鳥の一つです。しかし、猛禽類が現れたことを知らせてくれる親切な鳥がカラスです。カラスはタカなどの姿を見ると、攻撃する習性(「モビング」と呼ばれます)があります。上空を舞うタカなどを激しく鳴きながら追いかけるシーンをまずは探すと良いでしょう。

 

ノスリ(タカ科)を追うカラス。画像ではカラスは1羽ですが、群れで追いかけることもあります

私にとって、カラスは猛禽類に出会えるチャンスを増やしてくれる大事な鳥です

 

里山の王者、オオタカも探そう


 里山にはオオタカという猛禽類が生息しています。カラスほどの大きさですが、飛翔能力に優れ、里山に住む多くの生き物を俊敏に捕えています。上空を飛ぶ様子を見ることが多いのですが、春先などは観察しやすい枝先でじっとしていることもあります。里山の王者という紹介をしましたが、オオタカもカラスによくモビングをされていますので、やはりカラスが騒ぎ出したら、まずは空を眺めて猛禽類が飛んでいないか、チェックする習慣をつけましょう。

 

上空を舞うオオタカ。トビとは翼と尾羽の形が違います

冬よりも、春は止まっているオオタカを見つけられる機会が増えます

 

谷戸のため池を見てみよう


 谷戸は、もともと稲作のために開墾された場所です。しかし、谷戸から出る湧き水は稲作には冷たかったので、先人たちは溜池を掘って一時的に水をそこで温めてから田んぼへ流しました。今ではその溜池もあまり管理がされなくなってしまっているところもありますが、そのような水辺を利用する鳥も多くいます。

 

周囲にヨシが茂った場所は、鳥たちの格好の住処になっています

 

カワセミを探そう


 溜池にいる小魚を狙って、カワセミがいることがよくあります。図鑑で見ると青い背中がとても綺麗なのですぐに見つけられると思いがちですが、意外と自然の中では保護色です。

 

カワセミが画像の中にいます。どこにいるか、わかりますか?

意外と風景に溶け込んでしまっています

 

クイナも見つけてみよう


 水辺とヨシがセットになっている環境で見かけるのが、クイナです。ハトくらいの大きさで、浅い場所を歩いていることが多い鳥です。大きな物音や人の気配がすると、すぐにヨシの中へ隠れてしまうのですが、こちらがじっとして静かにしていると短い尾をピコピコと振りながら出てきます。

 

嘴が細長い姿のクイナ

 

 以前は見つけるのに苦労をした鳥なのですが、最近は冬のヨシ原ではよく見かけるようになった鳥の一つです。草陰になって見えにくいことも多いのですが、一度姿を確認した水辺では、一冬見かけることが多いので、発見した日はよく見えなかったとしても、何度か通うとチャンスがあるでしょう。日中の明るい時間よりも、曇りの日や夕方に会えることが多い気がします。

 

実際は、こんな感じで草陰に隠れていることが多い鳥です

 

運が良ければ、ヒクイナに会えるかも!


 クイナを「最近見かけるようになった」とお伝えしましたが、実はもう一種、ヒクイナという鳥も見かけるようになりました。以前は日本では繁殖のために夏に水田にやってくる鳥でしたが、1990年代にはほとんど見られなくなった鳥です。しかし、近年は冬にいる姿が見られるようになって、東京のド真ん中の公園の水辺などでも見られています。クイナのいる環境で見かけることが多いので、「ここにはヒクイナはいないかな?」と、探してみるのも楽しいものです。クイナよりも少し小さくて、頭部からお腹にかけて深赤色が特徴です。

 

ヒクイナ

 

他にもたくさんの鳥に会える里山散歩をぜひ!


 様々な環境がコンパクトにまとまった里山は、今回紹介した鳥たち以外にも、エナガやヤマガラ、コゲラなど、雑木林の中には多くの鳥が生息しています。

 

エナガ

ヤマガラ

コゲラ

 

また、田んぼや畑など、地面が開けているところでは、セキレイの仲間もよくやってきて食べ物を探す様子が見られます。

 

キセキレイ

セグロセキレイ

ハクセキレイ

 

 様々な鳥に出会える里山での観察会を、日本野鳥の会や自治体などが催していることが多いので、お住いの場所の地域の広報誌やネットなどで検索してみると良いでしょう。

 

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筆者紹介


神戸宇孝

野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール: 1973年石川県生まれ。
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる。CWニコル氏の環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて選ばれる。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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