2年目10月のおでかけポイント
No.19 明治神宮
環境:池 樹林
“東京の緑”を訪ねるうえで、野鳥観察を趣味とする人々には、どうしても外せない場所があります。それは明治神宮です。若者たちの街、原宿の目の前に都内とは思えないほどのうっそうとした森があります。
ここに神宮ができる前は荒れ地だったそうです。植物の遷移を考慮した多種多様な樹木が植栽されたことで、人工的に作られたものでありながら、人による手入れのほとんど必要ない極相林の様相を呈している、世界に誇れる日本の森です。都市の中にあり、年間800万人の人の出入りがありながら、多くの鳥が棲んでいる場所であることも注目すべき点です。
緑の豊かな森で、境内には小川も流れていますから一年中野鳥が多く棲んでおり、いつでも楽しめる森ですが、秋から冬にかけて多くの鳥たちが冬越しにやってきて個体数も増えるため、10月の観察地に選びました。
平日とはいえ、多くの人が訪れている明治神宮。鳥が観察しやすい南池のある御苑へ直行しました。紅葉が始まっていて、季節の移ろいを感じました。
ふと目の前の草地からチュイーンとカワラヒワのような声がしたために双眼鏡を向けると、そこにはなんとマヒワが一羽!慌ててカメラを出しましたが、あっという間に飛び去ってしまいました。残念に思いましたが、早速エナガが現れてくれました。
池の奥に足を進めると、笹薮があり、やはりここではウグイスの声がしてきました。姿は見えませんが、笹薮を好むウグイスが“いそうだ”というセンサーを働かせることで、声にも早く気づくことができます。
野鳥が好む実がなる樹木が多い明治神宮では樹上も要チェック。せわしなく動き回ってこれまた撮影はできませんでしたが、マミチャジナイというツグミの仲間もみることができました。
南池のそばでじっとしているだけで鳥が次々と現れますが、この日一番驚いたのは、アトリの群れが飛来したこと。池の奥のほうに群れが舞い降りて、代わる代わる水際に来ては水を飲んでいました。実は明治神宮に到着する数時間前に鳥を観察する仲間から「信州の森に今年はアトリがたくさんいる」という情報をもらっていたので、この冬はどこかでアトリに会えるだろうと考えていたところでしたが、まさかその日のうちにとは想像していませんでした。
しばらくしてアトリの群れは飛び立って森の上を旋回しながら奥へと姿を消しました。
顔の模様や翼の色など、空をバックにしてしまうと色が黒ずんでしまうのでスケッチをしました。
御苑を出て芝生広場側の池に移動することにしました。途中、アカゲラを見つけ、ウキウキしながら池に到着。水面にはマガモが浮いていました。
マガモの数を数えていたところ、チーと鋭い声。青い線を引くようにカワセミが目の前を通り、石の上に止まりました。明治神宮にもカワセミがいることは知っていましたし、この連載の訪問地で何度も出会っている鳥ではありますが、やはり観察できると嬉しいものです。
双眼鏡ではやや遠かったので、望遠レンズのついたカメラで撮影したところ、下嘴の赤が目立つので、雌の可能性が高い個体であることがわかりました。
ほかには、キジバトやスズメ、ヤマガラ、シジュウカラ、ハシブトガラスなどを観察できました。この日、合計20種ほどの観察で思ったよりは種類数に会えない日でしたが、新しく観察できた種類は4種類。あと5回で100種を超えるように頑張りたいと思います。
お勧め機種
明治神宮は参拝する方とすれ違うとき三脚があると危ない場合もあるので、双眼鏡のみでの観察がスマートで良いでしょう。森の中での観察は暗いことも多いので、明るいレンズを搭載したエンデバーEDシリーズでの観察がお勧めです。
野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |
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