1年目7月のおでかけポイント
No.04 東京港野鳥公園
環境:森林・干潟
梅雨が明けて間もない7月は、体がまだ温度の変化に対応できていない部分もあるので、真夏以上に体調管理には注意したいところ。都会でのバードウォッチングでは、空調設備のある観察ポイントがあるのも大きなメリットの一つ。今回の探鳥地は、ネイチャーセンターと呼ばれる観察施設で快適な観察もできる東京港野鳥公園です。写真には写っていませんが、隣は野菜や花などが多く扱われる大田市場です。
この場所は、もともとは東京湾の広大な干潟の一部でした。1960年代に埋め立てが進みましたが、一部に雨水が溜まって池ができたり、ヨシ原ができたことで、いつのまにか野鳥にとってすみやすい環境ができ、1970年ころから野鳥愛好家の間では観察スポットとして知られるようになりました。
当初はほぼすべてが開発される予定でしたが、保護活動と東京都の英断によって、大田市場の建設が始まるときに野鳥の保全地域の必要性が認識され、1989年に約25haの広さをもつ都立公園と一つとして開園しました。現在は自然観察の指導をしてくれるレンジャーが常駐していて野鳥の情報や観察方法を丁寧に教えてくれるので、野鳥のことをこれから学びたい方にはもってこいの場所です。
まず入ると大きな広場があり、ムクドリなどを楽しめましたが、ここはこれまでの観察地ではなかった干潟という環境があるので、新しい鳥との出会いを優先。先を急ぎました。
一見無生物に見える干潟の上ですが、まずは手前から鳥がいないチェックすると、キジバトの姿が。これまでの観察地では草むらで餌を食べていたり、木の上で休んでいる姿をよく見たキジバトでしたので、干潟の上を歩くキジバトというのは不思議な感じがしました。
次に白い大きな鳥が目に入り、望遠鏡で確認すると、ダイサギでした。ふと杭の上を見るとカワウがいることに気づき、そこにプカっとカイツブリが浮かんできました。大きな鳥を目印にして鳥を探すと、このように“オマケ”がつくこともしばしばです。
先に見つけたダイサギのゆったりとした歩く姿を観察すると、今度はコサギが双眼鏡の視野に入りました。
白い鳥に目が慣れて改めて干潟を見渡すと、コサギよりも小さい白い点。望遠鏡で見ると嘴の先端の赤と黒があるので、ウミネコであることを確認できました。
ウミネコを観察していると、視野の中に今度は飛び回る白い鳥が通過。目で追うと、翼が細長く一見ツバメのような形。でもツバメにしては体が大きく、軽々と羽ばたいています。コアジサシです。
肉眼で周囲を見ると、3-4羽が飛び回っています。撮影するにはちょっと飛翔の動きが複雑でしたので、スケッチに切り替えて観察。
鳥をいくつか観察すると、鳥の動きや存在に目がついてくるようになり、干潟の上をチョロチョロと動く鳥を発見。目の回りにはっきりした黄色いリングがあるのでコチドリで間違いなさそうです。
潮が引いてきて、干潟が少しずつ出てくると、別の鳥もやってきました。灰色の地味な印象ですが、コチドリよりも嘴が長くまっすぐなので、キアシシギでしょう。日本では春と秋の渡りの時期に観られます。
キアシシギの出現でシギチ観察モードに入ると、もう一種ソリハシシギを発見。少しずつエンジンがかかってきました!キアシシギの良く似た姿をしていますが、名前の通り嘴が少し上に反っているのが大きな特徴です。先にキアシシギを観察できていたので、識別がスムーズにできました。
ちょっと喉が渇いたので、入り口の自販機に飲み物を買いにいくことにし、先ほど通過をしてしまった淡水池に立ち寄ることに。ハイド(観察小屋)の小窓から覗くと、カルガモの姿を確認。
鳥がいるのだから、虫もたくさんいました。都会ではなかなか姿が見られないチョウトンボも舞っていました。当たり前ですが、鳥は鳥だけで生きているわけではありません。こういう鳥以外の生き物たちとの出会いを通して環境の状態を確認しておくことはとても大事です。
木の幹にはカナブンがいっぱい。もともとは埋め立て地だったこの野鳥公園が開園して25年以上経ち、園内の木々も大きくなりました。チョウトンボのような湿地の虫だけではなく、森林性の昆虫たちもいるようです。
お勧め機種
ネイチャーセンターや観察小屋には望遠鏡がありますが、やはりじっくり観察したいならば、自分の望遠鏡を持っていくことをお勧めします。水辺での観察は長い時間望遠鏡を覗くことも多くなるので、疲れにくい傾斜型のほうが便利です。鳥との距離が遠いことも多い場所なので、双眼鏡は10倍のものが威力を発揮することから、レンズ性能が高いVEO HD2シリーズがよいと思います。
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野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |
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