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春と秋、繁殖地と越冬地に向かうため、鳥たちは大移動をする種類がいます。その途中に立ち寄る場所は渡りの中継地と呼び、一か所にいながら次々といろいろな鳥たちに会える非常に楽しい場所です。
代表的な場所とは
その代表的な場所は主に日本海側の離島で、宿数や島の大きさを考えると、山形県酒田市の沖合にある飛島が非常にお勧めのバードウォッチング・スポットです。アクセスもよく、人気の高い場所になっており、近年訪問するバードウォッチャーも増えてきています。
山形県飛島
http://www.sakata-kankou.com/spot/161
定期船について
http://www.city.sakata.lg.jp/sangyo/kotsu/teikisen/index.html
フェリーは基本的には一日1往復ですが、連休中など、多客期は増便されることがあります。渡航日によっては満席のこともあるので事前予約をお勧めします。
酒田市 市民部定期航路事業所
電話:0234-22-3911
野鳥観察を通して知り合った方からのお誘いを受け、5年連続で私は飛島に5月上旬に行きました。その記録を基に、飛島での野鳥観察の楽しさをお伝えします。
船酔いの避けるためにも、航路では気持ち良い風に当たることができる甲板で海鳥観察をするのが良いでしょう。風が常に当たるために体が冷えやすく、フリースやレインウェアの着用をしましょう。
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到着後まずやること
まずは船の後をついて来るウミネコをしっかり観察して、海鳥の出現に目を慣らせましょう。
ウミネコ
オオミズナギドリ
船から少し離れたところを飛ぶのは、オオミズナギドリです。ウミネコよりも翼が長く、海面近くを高速で飛ぶことが多いことで見分けます。
そのほかにも、ウミスズメ類やアビ類など、普段の観察では会えないような鳥たちにも会えますので、極力甲板に出て鳥を探しましょう。運が良ければ、シロエリオオハムなどにも会えるでしょう。
アビの仲間、シロエリオオハム
島の南部になる港に船が入ります。島に上陸したら、荷物を宿に預けて、まずイソヒヨドリを探しましょう。港の近くの屋根にいることが多いです。
イソヒヨドリ(雄)
飛島は周囲10km程度の小さな島ですので、車などは不要です。鳥が観察しやすいのは、島の東側の海岸線に沿った道と、島の北東から南西をちょうど背骨のような感じで通る道沿いにある林や畑です。この道沿いを自分の歩きたいペースでゆっくり歩けば、鳥は向こうから現れてくれることがほとんどです。
5月上旬の飛島は、ヒタキ類が多いのが特徴です。島の至る所で、キビタキがいます。
キビタキ(雄)
キビタキの次に観察しておきたいのは、オオルリです。繁殖地では木の高いところでさえずっていることが多く、背中の瑠璃色を観察しにくいのですが、飛島では地上付近での採餌も多いために、よく見えます。
オオルリ雄
草地を見るとノビタキやジョウビタキなどがみられるでしょう。畑にもこれらの鳥たちがやってきますが、島民の皆さんの大切な畑に入ることはやめましょう。島内のメインロードからの観察で十分楽しめます。
ノビタキ(雄)
ジョウビタキ(雌)
ちょっとした草地にも関東では珍しいミヤマホオジロが潜んでいますし、オガワコマドリなどの珍鳥がいることもしばしばです。いつでも「何かいないか」と思って鳥の動きを察知することが大事です。
ミヤマホオジロ
オガワコマドリ
しかし、ずっと小さな鳥を探して緊張しているのも疲れてしまうので、大きな鳥を探すのも良いでしょう。島の中で数年前から飼われているヤギのそばには、サギの仲間がよく訪れています。アマサギやチュウサギに天気が良くないときに島に立ち寄っていることが多いようです。
アマサギ
チュウサギ
北上するツグミの群れをチェックしていると、いろいろな種類が見られます。草地や林縁部を重点的に見て回りましょう。ツグミ
目の上に白い線が入っている脇腹の赤いツグミがいたら、それはマミチャジナイです。
枝先にいるツグミにも要注意です。ツグミと同じような感じで止まっていても、違う科のコムクドリであることもしばしばです。
コムクドリ
観察に適した時間帯
鳥がよく出るのはやはり日の出から午前中いっぱいですので、午後は少し休みましょう。宿泊が決まっているのならば、宿のそばでゆっくりするのもいいでしょう。島に生息するハヤブサがアマツバメと共に飛翔していることもよくあります。ハヤブサ
海岸線の岩場に休憩する場所があり、ウミネコが繁殖の様子が見られます。日本で繁殖するカモメの仲間は少ないので、これも観察しておきましょう。北へ移動途中のヒメウも一緒に観察できるかもしれません。ヒメウ(黒い鳥)。そのほかにも画面にはウミネコ、ハクセキレイが一緒にいます
年によって個体数や種類に変動があり、その変化も楽しいものです。私も5年ほど通った中で、アオバズクやツツドリ、ヤツガシラ、カラスバト、コルリが見られたことがあり、行くたびに貴重な経験をしています。茂みの中にいたアオバズク
観察できる機会は少ないツツドリも見られました
ヤツガシラを見られたのは5年のうちで1回だけですが、ゆっくり観察できました
斜面林をよく見ると警戒心の強いカラスバトに会えるかもしれません
コルリは早朝に島の北東部で見られることが多いです
鳥たちを追いかけない
たくさんの鳥に会える素敵な飛島ですが、渡り鳥たちにとっては長い旅路の途中で、命がけで渡りをしています。海を越えてヘトヘトの状態で島に到着し、少しでも早く栄養補給をして繁殖地に向かわなくてはいけないのです。くれぐれも追いかけ回したり、無理に近づいたりせずにそっと観察することを忘れないでください。餌が取れない状態が続くと、写真のように死んでしまうことがあります。
力尽きたアトリの死骸
たくさんの鳥たちに会える飛島。一羽でも多くの鳥たちがまた飛島に来てくれるように、優しい気持ちで観察をしていただけたら嬉しいです。
記事:野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール
1973年 石川県生まれ。
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。
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感動と発見をもっと近くに
神戸宇孝
2019年5月24日
宮本アジサ様
コメントありがとうございます。嬉しく拝読しました。渡り鳥の中継地では一度にたくさんの種類の鳥たちに会えるので、多くの野鳥カメラマンで賑わうようになっています。
舳倉島には私は中学生の時(30年以上前になります)に一度だけ訪問したことがあり、飛島同様、目の前に次々と現れる多くの鳥たちに感激をしました。渡りという命がけの行動に対して、敬いをもつ人たちを一人でも増やすために自分ができることはしていきたいと帰りの船で決意した訪問でもありました。
いろんな鳥たちが、自力で大海原を越えていく間に立ち寄りたいと思ったり、冬越しすると落ち着けていいと感じたり、子育てに良い場所だと毎年目指してくれる、そんな日本であって欲しいと思っています。そんな場所が一箇所でも増えることを願う私と読者の皆さんの考えが重なるように、これからも連載を続けていきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
宮本 アジサ
2019年5月24日
神戸さんのバードウオッチング指南、いつも楽しみにしています。今回もとても参考になりました。
毎回、鳥を見るための心がけを丁寧に説明されていて、観察する時の指標としています。
飛島、いい所ですね。同じ日本海の能登沖の舳倉島と似たような感じがします。渡り鳥たちがたっぷり栄養補給を済ませて無事に渡りきれるよう祈らずにはいられません。