2年目6月のおでかけポイント
No.15 尾久の原公園
環境:池、草地
バードウォッチングでは、都心では鳥が少なく、遠出をしないと多くの野鳥に会えない時期というのがいくつかあり、6月から8月くらいまでは当たります。理由は鳥の繁殖期であり、都会の緑では多くの種類を支えるだけの緑地が少ないことがその理由です。しかし、鳥がいないわけではないので、私はこの時期に、じっくり観察する種類を特定して出かけることが増えていきます。
6月は都会に残された数少ない草地を訪問し、オオヨシキリという鳥を探すことにしました。今回は地図で確認した尾久の原公園。
最寄り駅が都電荒川線の熊野前という駅です。一部路面走行区間もあるこんな電車でバードウォッチングに行けるのは、関東広しといえども、東京23区内のみ。情緒があって楽しいです。
もともと工場跡地だった場所にいつのまにか水たまりや草地ができ、自然に親しむ場所として作られた尾久の原公園が開園したそうです。空の様子は今にも泣き出しそうな雰囲気でしたが、自然環境を保全する工夫がされているので園内に入るとすぐに鳥の声がしました。
まずはスズメです。群れでいるようです。そのスズメもよく見ると嘴の根元が黄色いものが混じっていました。今年生まれた若い個体です。
草地の上にはキジバトも休んでいました。写真ではわかりにくいのですが、後ろの個体の頸には、キジバトの特徴であり青い筋状の模様がなかったので、どうやらキジバトも親子で飛来しているようでした。
この公園は、都会の公園には珍しく開けた草地や湿地が多く保全されていました。この時期にそのような環境に飛来する賑やかな大きな声が草地から聞こえてきました。(05a)
声の主はオオヨシキリ。草のてっぺんで鳴いている個体が多かったのですが(05a)、彼らの動きを観察していると、なるべく広く見渡せる場所がいいのか、木に止まるものにも会いました。
オオヨシキリはあちこち飛び回ったり、茂みに潜んでいたりしてなかなかどのくらいいるのかはわかりませんでしたが、少なくとも声だけで同時に3カ所から聞こえました。それしてもずっとさえずりを続けていて、本当にせわしなくしている姿が印象的でした。
オオヨシキリのスケッチをしました。真っ赤な口の中はとても印象的でした。飛んでいるときに足がほかの鳥よりもよく見えるのはなぜだろうと思い、描いておきました。
そんな大騒ぎのオオヨシキリの脇では、カルガモがのんびりとしていました。あまりにも対照的な様子にちょっと笑ってしまいました。
しばらくすると、公園の中を草刈り作業が始まりました。大きな音を立ててバギーが動き回り、鳥たちがいなくなってしまうかと思いきや、思いがけないことが起きました。草を刈った場所を目指してたくさんの鳥たちが舞い降りて来たのです。
やってきたのはムクドリとスズメでしたが、圧倒的にムクドリの数が多かったです。作業の邪魔にならないようにしながら、ゆっくり近づくとすぐそばまで近づくことができました。草刈りによって草の間に隠れているたくさんの虫が地表に現れるのを狙っているようで、みな私のことなど気にせず一心不乱に餌探しをしています。
そんな群れをよく見てみると、色の薄いムクドリがいくつか見つかりました。嘴に黒っぽい色ある、今年巣立った幼鳥でした。こうやって成鳥の行動を見て、東京で生きていく術を学んでいるのでしょう。
草刈り作業が終わり、しばらくするとムクドリたちも散らばっていき、静かになりました。今日観察した鳥を記録した手帳を見ると、12種。新しく観察できた鳥もなかったので、公園の北側を流れる隅田川の川縁も見てみましたが、鳥の姿がありませんでした。でも、「いなかった」ことも大事な記録ですし、冬ならばカモ類やユリカモメは来ていそうな感じがしました。
観察できた種類は少なく、新たに観察できた鳥もいない日でしたが、子供達が遊んでいるような23区内の公園でオオヨシキリがたくさんいる環境があるのは、とてもうれしいことでした。これから毎年この時期に訪れてもいいなと思いながら、雨が降り出した尾久の原公園を後にしました。
お勧め機種
尾久の原公園は双眼鏡だけでも十分楽しめますが、開けた環境が多く、オオヨシキリなどは草の先などでしばらく止まって鳴くので望遠鏡もあると重宝します。ズームになっているアイピースのHDやXFのシリーズがあると、よりじっくりと観察できると思います。望遠鏡を運ぶときは三脚を閉じて歩き、公園で遊ぶ子供や散歩に来ている方々に足先が危なくないように配慮をし、スマートなバードウォッチングを心がけましょう。