1年目3月のおでかけポイント
No.12 水元公園
環境:池 森林
この連載を始めて一年となりました。前回までで確認できた鳥の種類は53種類。残りはあと47種類です。次の一年で同じ数の53種を見られれば目標達成ですが、さてさてどうなるでしょうか。
さて、この連載を始めてからずっと行きたいと思っていた場所があります。それが今回訪問した水元公園です。
ネット上に公開されている地図で見ると、蛇行した川に沿って立派な緑が形成されていて、鳥のいそうな気配がしたことも大きな理由ですが、子供のころに買った野鳥の本には水元公園で撮影された野鳥写真があり、憧れの場所でした。不思議とこれまで来る機会がなく、初の訪問。
最初に現れたのは、芝生の上のツグミ。トコトコと歩いた後にすっと胸を張る姿勢になっていたので、すぐにわかりました。5回連続の登場です。
ツグミを見ていると水辺のほうから「ギューイ」という濁った声。声の方を見ると、ユリカモメが飛んでいました。双眼鏡で見ると同一視野にヒドリガモもいることが判明。
カモ類では、キンクロハジロとホシハジロも姿がありました。寝ている姿を観察して、特にホシハジロの頭の赤茶色は季節が進むにつれて鮮やかになっているように感じました。
キンクロハジロが少し上空を気にする素振りを見せたので、どこかに猛禽類が飛んでいるかもしれないと辺りを見渡すと、木の高い所に鳥影がありました。しかしタカの仲間にしては小さく感じて、よく観察すると、モズでした。キンクロハジロはハトくらいの大きさで,モズが獲物として狙うには大きすぎるはずですが、小鳥を襲うこともある獰猛さをもつので、キンクロハジロも念のため警戒をしていたようです。
水元公園にはさまざまな環境がありますが、ヨシ原が一つの魅力です。しかも、そのヨシ原を観察しやすいように木道が設置されているエリアがあり、そこでどんな鳥がいるかを楽しみに行くと、一羽の鳥が木道のそばでじっとしていました。
顔を翼の潜らせるようにして寝ていますが、褐色の体に白っぽい斑点のある模様からゴイサギの幼鳥と判断できました。警戒もせずに休んでいるので、体調が悪いのかもしれません。一日も早く体力を回復することを祈りながら、その場をすぐ後にしました。
ヨシという植物は湿地に密生して生えるため、管理のために公園などでは刈取り作業が行われることがあります。その刈り取った部分は鳥たちにとって貴重な餌場となりますので、要チェックのポイントになります。見るとコサギが舞い降りて餌を探していました。
コサギがいるのを見て、良い餌場と思ったのでしょうか。コサギより大きなアオサギも舞い降りてきました。
ヨシを刈り取ったエリアを見渡していると、一番奥の場所でチョコチョコと動いている鳥がいました。双眼鏡で見ると嘴が長いのですが、サギにしては小柄で動きが素早く、時々駆け足で草むらへ隠れる行動をしています。
下嘴が赤く、お腹に黒白の縞模様があります。クイナという鳥です。警戒心が強いのでなかなかゆっくりと観察できない鳥です。私が観察していると、地元の方が来て「あ、今日も出てきているね」と一言。お聞きすると、この冬は比較的見やすいところに出てきてくれているとのことでした。姿の見えにくい鳥を観察できて、ラッキーでした。
クイナの詳細を教えてくださった方にこの公園の見所を聞くと、カワウのコロニー(集団繁殖地)もあるから見ていくといいよとのこと。早速見に行くことにしました。
カワウのコロニーから少し歩くと、大きなカメラを持った方にお会いしました。挨拶をすると、公園西端に水元かわせみの里というのがあり、そこも鳥がいろいろいるこという情報提供をいただきました。水元公園の皆さん、とても親切です。足早にかわせみの里を目指しましたが、ふと横の池の杭に白と黒のセキレイが。
ハクセキレイかなと見ると、セグロセキレイでした。これもこの連載では初めての種類。鳥の姿も種類もたくさんの水元公園です。
セグロセキレイとの出会いで少し到着が遅れたものの、かわせみの里につくと建物の中にカワセミのやってきた時間が細かく書いてありました。
到着してまもなく、カワセミの登場。秋以降、訪問先でカワセミを観察できる機会が増えています。一昔前は幻と言われたほどの鳥ですが、23区内の公園でも会えるまでになりました。もう“完全復活”といってもいいでしょう。
カワセミを待っていると、いろいろな鳥がやってきます。この連載でレギュラー出現のヒヨドリのほか、アオジが現れました。
カワセミ観察を終えてお昼ご飯を食べ、さて次にどこへ行こうかと思案していると、館内にいた方からと声をかけられました。都内でいろいろな鳥を見ることを目標にしていることを伝えると、ぜひ水元でオオジュリンを見ていってくださいとアドバイスをいただきました。オオジュリンはヨシ原が好みですので、ゴイサギのいた辺りへ再度行くことにしました。
当日は寒く、かわせみの里の館内が暖かくてのんびりしすぎてしまい、オオジュリンをしっかり探すには急いだほうがよさそうです。しかし、こういう時に限って、いろいろ鳥が出ます。ハシビロガモ、
脚が赤くて繁殖モードになったアオサギ、
ハクセキレイ、
オナガ、
シロハラ、
シメ、
コガモ、
などなど。うーん、オオジュリンの場所になかなかたどり着けない!うれしい悲鳴です。
いろいろな鳥との出会いを楽しみつつ、ようやくヨシのある場所に到着。ヨシの間からパチパチという乾いた音が聞こえてきます。オオジュリンが餌を探している音です。
音を頼りに探すと、簡単にオオジュリンが見つかりました。変わった名前ですが、ホオジロの仲間。関東周辺では冬に見られます。ヨシの茎の中にいる虫をほじくって食べます。
ほかにもヨシが揺れていたのでオオジュリンと思って双眼鏡を向けると、シジュウカラとウグイスがいました。ウグイスは茎の表面をつついていましたが、シジュウカラはオオジュリンのようにヨシの茎をほじくっていたので、同じように虫を探しているようです。食べ物が重複していますので、縄張り争いをするかと思いきや、並んでいる光景もあり、仲良く暮らしているようです。
今回のイラストはオオジュリン。
今回は32種も出現して、この連載開始して一番多くの種類を見ました。しかも新しく見たのは6種。2年目に向けて、いいリズムになってくれるといいなと思いながら、帰宅しました。
一つお願いがあります。広い公園ですが、お子さんの姿も多かったので、望遠鏡やカメラに三脚を装着している場合、歩くときはどうか脚をたたんで持ち歩いてください。一般の来園者の方から「三脚を開いて歩いている人がいると、子供が不意に近づいたときに怖い」という意見を聞きました。周りの人にスマートなバードウォッチングを心がけてください。
お勧め機種
水元公園はさまざまな自然環境があるので双眼鏡だけではなく、望遠鏡もぜひ持っていきたい場所。接眼レンズで倍率が調節できるバンガードの望遠鏡はエンデバーHDシリーズ、エンデバーXFシリーズともにお勧め。双眼鏡も、クイナやオオジュリンのような保護色の鳥を探すには、コーティングがしっかりしていて色のバランスがいいEDレンズを採用しているシリーズがいいでしょう。