神戸宇孝さんの「らくらくバードウォッチング」NO.18 小石川植物園

神戸宇孝さんの「らくらくバードウォッチング」NO.18 小石川植物園

2年目09月のおでかけポイント

No.18 小石川植物園

環境:池 樹林

 

東京を歩いていると、突然大きな緑の存在に驚くことがあります。この連載を始めて間もない頃に、茗荷谷に用事があって行ったときにビルの合間からこんもりとした木々の先端が見え、それを頼りに曲がりくねった道を行くと小石川植物園の入口に到着。そのときは時間がなくて中に入れませんでしたが、都会にあるこんな立派な森ならば鳥が来るはずと予想し、渡り鳥が立ち寄っていそうな9月に訪問しました。

この植物園の歴史は長く、1634年に徳川幕府が設置した小石川薬園が源だそうです。ちなみに、国際的な植物研究で知られる英国のキューガーデンは宮殿併設の庭園として1759年に設置ですから、それよりも歴史は長いことになります。

早速双眼鏡を取り出して、観察開始。斜面林の中で黒い影が動くのが見えました。ハシブトガラスです。

しかしこの直後、このハシブトガラスはものすごい勢いで飛び立ち、激しく鳴いて森の中を飛び回りました。何かいるようです。

ハシブトガラスの動きを見ていると、ある一本の木の周りを念入りに飛び回り、盛んに鳴いています。これは何かあると思い、よく見るとなんとオオタカの若鳥がいました。

思いがけないオオタカとの出会いに興奮冷めやらぬなか、森の中を歩くとエナガの声がしてきました。一昔前は東京23区でエナガを見ることなどなかったのですが、時代が変わってエナガもしっかり都会の森の中で生きる鳥の仲間入りをしました。

渡り鳥の姿を求めて、斜面の森を散策することにしました。

木の上のほうを飛び回る小鳥が目に入りました。双眼鏡で確認すると、お腹に斑点模様があるものと斑点のないものがいることがわかりました。エゾビタキとコサメビタキです。この連載では初めて確認できた鳥です。

しかし、木の高い場所がお気に入りのようで、顔がしっかり見えるのは首を傾げたときだけ。なかなかシャッターチャンスが合いません。そういうときこそ、スケッチの出番です。しかし、エゾビタキに集中していたら、いつのまにかコサメビタキはどこかへ行ってしまい、スケッチをするタイミングを失ってしまいました。残念!

エゾビタキのいた木はミズキという種類の木で秋に紫色の実がなります。鳥たちが大好きな種類で、蚊の襲来に耐えながら待っているとヒヨドリがやってきて、美味しそうにつまんでいました。

ヒヨドリを見ていると目の前を黄色と黒の鳥が横切りました。キビタキの雄です。去年は雌しか見られなかったので、このきれいな雄との出会いは感激です。慌ててカメラを向けたので、ピントはずれになってしまったばかりではなく、手ぶれもひどい画像に。でもその分、こちらの興奮は伝わるでしょうか。

斜面林はやはり鳥が多いようです。シジュウカラやヤマガラも姿を見せました。

先月同様、午後になるとやや黒い雲が広がりました。遠くでカミナリのような音も聞こえてきました。こういうときは早々に切り上げて家路に急ぐのが得策です。13種を観察し、そのうち2種は初めてみた鳥でしたので、私としては大満足の探鳥日でした。

 

お勧め機種

樹林の中を動き回る鳥たちを観察するときは、双眼鏡で追うのがよいでしょう。高いところにいるエゾビタキやコサメビタキは下から見上げることも多いためにシルエットになりやすく、なるべく明るいレンズを搭載したEDシリーズでの観察がお勧めです。

 

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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